ふたりはプリキュア 8話『プリキュア解散!ぶちゃっけ早すぎ!?』
今や伝説と語り継がれている、初代プリキュアの喧嘩回。
とはいえ僕自身もう記憶がほぼ残っていないので、実質初見みたいなところがあります。
初代プリキュア感想を始めるにあたり、一番楽しみにしていた回です。さっそく見ていきます。
平和なベローネ学院女子中等部。プリキュアとしての使命と普通の学園生活との板挟みになり悩むなぎさ。もう8話なのでだいぶ見慣れてきた感があります。気だるげに中庭を見ていると、憧れの藤ピー先輩に親しげに話しかけるほのかの姿が。
「雪城さんはただの幼馴染って言ってたけど……気になるなぁ」
ってか作画良~! なぎさとほのかが普段の3割り増しぐらいでかわいいです。地味にモブがすごい動いているのがやばい。だってモブですよ、普通の回だとそこに作画カロリーは割けないでしょ。それをあえてやっているところに、『プリキュアにとって大事なのは日常だ』という価値観が見えて感動します。
女子トイレ。終始鏡の前でシーンが進行するので、鏡の写り込みもちゃんと描かれているんですよ。やゔぁ。
ほのかに真面目な話を切り出そうとしたなぎさですが、ミップルメップルがイチャイチャし始めて台無しに。校内だからと携帯状態に戻るよう言うなぎさ。
「君にも恋をする者の気持ちがわかるはずだメポ!」
メップル、お前! メップル経由で、なぎさが藤ピー先輩を好きだと言うことがミップルにも伝えられてしまいます。
「何話しとるんじゃー!!」
ほんとそれなんだよなあ。なぎさは怒っていい。結局なぎさはほのかに何も言い出せず。
放課後、ほのかの家。お好み焼きを食べているミップル。なんでお好み焼き……?
ミップルはお好み焼きを食べながらもメップルに想いを馳せています。ラブラブだなあ。メップルのどこにそんなに惹かれているのか傍目にはさっぱりわかりませんが。
「ほのかは好きな人いないミポ?」
「好きな人? 別にいないけど?」
「なぎさは違うみたいミポ。藤ピーって人が気になっているらしいミポ」
ミップル経由で勝手にもれるなぎさの個人情報。
翌朝、通学路。藤ピー先輩とほのかの関係が気になり寝不足のなぎさ。
そこへ、張本人の二人が一緒に現れました。一緒に登校することになる3人。
いや、視聴者的にはわかるんですよ。ほのか的には気を利かせているつもりなのだろうなってのは。ただなぎさから見ると、あらためて幼馴染の距離感を見せつけられているだけにしか見えないと言う。いや、視聴者的にも藤村先輩とほのかがめちゃくちゃ幼馴染トークをしているという絵面。
ほのかは気を利かせて(?)、二人にそれぞれを紹介します。
「男子部3年、藤村省吾。よろしく!」
8話目でようやっとフルネームが判明した藤ピー先輩。そこへ藤ピー先輩の親友の木俣先輩も合流。木俣先輩もほのかのことを昔から知っているようなので、まあ彼らの妹ポジションなのでしょうね、ほのかは。
「良かったわ、藤村くんに美墨さんを紹介できて。前から話したいと思っていたんでしょ?」
何の悪気もなく言い放つほのか。ありえない! と駆け出してしまうなぎさ。
河川敷。
「余計なことしないでよ」
「え……? 私はただ、あなたと藤村くんが話せるきっかけができればいいと思って……」
「それがお節介だって言うのよ……勝手に決めないでよ! 私がどうしたいかなんて、なんであなたにわかるのよ。それとも自分の考えていることはいつも正しいとでも思ってるの!? ちょっと無神経すぎるんじゃない!?」
怒りを抑えられなくなっているなぎさ。
「雪城さんなんかに、私の気持ちがわかるわけない」
なぎさを繋ぎとめようとする、ほのかの腕も振りほどいてしまいます。
「もういいから放っておいて! あなたなんてプリキュアってだけで、友達でもなんでもないんだから!!」
そう言ってしまってから、なぎさは今の自分の言葉がどれだけほのかを傷つけたのか、彼女の表情から悟ります。
「そうね……余計なことだったかもね」
力なく立ち去っていくほのか。
「なんであんなこと……言っちゃったんだろう」
後悔するなぎさ。そんななぎさを、事情は知らないながらも励ましたのは、同じラクロス部のりなとしほ。
「悩み事があるなら、なんでも言いなよ。私たちは何があっても、なぎさの味方だからね」
「そうだぞ! 私たちは友達だろ!」
この二人、なぎさの日常パートには1話からずっといるんですよね。日常を共に過ごしている友人。ふたりはプリキュアは人間関係の広がりがきちんと描写されていて、この世界に生活感があります。それがすごくいい。
「あの、朝のことはごめんなさい。あれから、いろいろ考えたの。私に、これを持っている資格はないなって……」
そういって、ミップルを差し出すほのか。思ったことをすぐ口にしてしまう行動に移してしまうのはほのかの癖で、それは5話の時にも強調されていました。今回初めて、そのことを深く反省したのかもしれません。もっとも反省した結果もまた極端なのですが。
その言葉と行動に激しく動揺するなぎさ。この反応は完全に予想していなかったようです。
なぎさとしては、ほのかはプリキュアを一緒にやっている人で、プライベートでは自分はほのかには釣り合いがとれないと思っていたわけです(5話参照)。
ですがほのかにしてみれば、なぎさは一緒にいること自体が楽しい人であり、ただの友達以上のプリキュアというつながりもある唯一無二の存在だった。そのなぎさを、ほのか自身の不用意な行動で傷つけてしまったわけですから、そのことにほのか自身が耐えられなくなってしまったわけです。
家。ほのかがプリキュアをやめてしまいそうなことに対して慌てるミップルメップル。なぎさもまた、仲直りがしたいと悩んでいました。
いつの間にか、なぎさにとってもほのかが『ただプリキュアを一緒にやっている人』ではなくなっていたのですね。
なぎさはミップルの助言もあり、自分の本当の気持ちをプリキュア手帳(6話参照)に吐き出すことにしました。
「ありえないありえないありえないありえないありえないありえない」
なぎさが壊れた……。
翌朝。いやに元気よくほのかに挨拶をするなぎさ。完全に空元気で見ているこっちが気まずい。逃げるようにさっていくほのか。学校でもほのかに隙を見ては話しかけようとするなぎさですが、ほのかは毎回逃げるように去っていきます。
放課後。「明日こそは雪城さんと仲直りできますように」神社で神頼みをしているなぎさ。そこを襲撃するゲキドラーゴ。なぎさの悲鳴を聞きつけたほのかもそこに駆けつけますが、木のザケンナーと融合したゲキドラーゴがほのかもまた襲います。
「もたもたしてないで早く!」
「もたもたなんかしてません!」
状況が状況なので喧嘩などと言っている場合ではなく二人は変身。
「ちなみに私、もたもたなんてしてませんから! 自分の考えていることが、いつも正しいとも思ってません!」
変身するなりなぎさに対する怒りをぶちまけ始めるキュアホワイト。なぎさもなぎさで反論し、口論はヒートアップ。完全にゲキドラーゴは置いてけぼりです。
お互いの違うところに関して、たまっていた不満をぶつけ合う二人。無視されたゲキドラーゴが怒りながら乱入しますが、口喧嘩話し合いを邪魔された二人の怒りが逆に爆発。
いきなりプリキュア・マーブルスクリューを発動し、一瞬でお星様にしてしまいました。哀れ!
戦闘後。ぎくしゃくしたままの二人は、そのまま何も話すことなく別れます。
それぞれの家。悩む二人に、ほのかのお婆ちゃんやなぎさの母はアドバイスをします。
「ほのかはどうしたいんだい? ほのかがどうしたいかが大事なことなんじゃないかしら。ほのかにとってその人が大切な人ならなおさらね」
「喧嘩をすることは悪いことじゃないでしょ。だって、どうでもいい子とは喧嘩なんてしないでしょ?」
ほのかとなぎさは、手帳がゲキドラーゴの襲撃のばたばたの中で入れ替わっていたことに気がつきます。手帳越しにお互いの本心を知る二人。
『私と美墨さんは全然違う。性格も、考え方も、価値観も違う。彼女の考えていることがわからない』
『体を動かすのが好き。勉強は退屈。草の匂いが好き。私の靴下はちょっとくさい、なんちゃって』
『良かれと思ってしたことで、彼女を怒らせてしまった』
『友達が大好き。喧嘩は、嫌い』
『彼女と私は全然違う。だけど一緒にいると楽しい』
『雪城さんのこと、もっと知りたい』
『美墨さんと、友達になりたい』
もう、二人の間のわだかまりは完全に溶けました。
翌朝、河川敷であった二人。
「これ、なぎさの」
とほのかが手帳を返します。
「なぎさの、手帳でしょ?」
このシーンのほのかの破壊力たるや。すごい。なぎさも意図を汲み取って、その手を握ります。
「行こう、ほのか!」
ふたりはプリキュア、序盤のクライマックス
1~7話までかけて、この8話の展開が準備されていたのだなと思いました。なぎさとほのかの真逆の性格。お互いにそれを指摘しあえない微妙な関係性。今思い返してみると、8話までの間でお互いがお互いを『友達』だと言ってるシーンはないんですよ。この話の説得力は、それまでの小さな積み重ねの集大成です。
喧嘩しながらの戦闘シーンも良かったですね。これ以前の話でも、ほのかがなぎさの行動に呆れたり、なぎさがほのかのストレートな言動に困惑したり等はありましたが、お互いに踏み込んだ指摘はしていませんでした。喧嘩をしあいぶつかりあったことで、ようやっと二人が対等に意見をぶつけ合える間柄になりました。
価値観の違う友達とぶつかってしまう。喧嘩になる。反省も後悔もするけど、直接会うと素直になりきれない。きっとそれは誰にでもあることで、もちろん、プリキュアを見ている子供世界でもよくあること。いやむしろ、子供のまだ狭いコミュニティの中でこそ、より深刻に存在すること。
そういう困難を乗り越え、他の人と手を取り合うことこそがプリキュアという作品の核なのだというのがはっきり示された回だったと思います。地球のためみんなのため、そんなことより忘れちゃいけないことがあるのです。だからこそこの話ではゲキドラーゴは脇役でしかなかった。
プリキュアはふたりなのです。ひとりであってはいけなかった。
プリキュアのテーマを体現したすばらしい1話でした。是非見て欲しい。願わくば1~8話セットで見て欲しい。時間がなければ1話、5話、8話だけでも見て欲しい。
そしてラストの雪城ほのかのかわいらしさに打ち震えるがいい!!