神原のブログ

同人小説などを書いています。

【ふたりは5話感想】ピーサード死す

これまでのあらすじ

プリズムストーンを7つのうち5つ手中に収めたドツクゾーンだったが、残りの2つは人間界に逃げられてしまった。それを回収すべく人間界にやってきたカブキマンピーサードの前に伝説の戦士プリキュアが立ち塞がる。

ザケンナー、催眠、石化などの多様な能力と狡猾な作戦を武器に立ち向かうピーサードだったが、毎回プリキュアが最後に放つプリキュア ・マーブルスクリューに敗れてしまう。もう失敗は許されない。負けて帰れば粛清があるのみ。

お願い、死なないでピーサード! あんたが今ここで倒れたら、ジャアクキング様との約束はどうなっちゃうの? 

 

ふたりはプリキュア 第5話『マジヤバ!捨て身のピーサード

 

と言う感じで5話です。

 

「今日のなぎさ、なんか微妙に可愛いメポ!」

なぎさをおだててこき使うことを覚え始めたメップル。ろくな成長をしていません。わがままを絵に描いたようです。本人は亭主関白だと胸を張ります。21世紀だぞ。

 

「もう一度、もう一度だけチャンスをください!」

前回マーブルスクリューをもろに食らっていながら、どっこい生きてたピーサード。とはいえ後がないのは変わりません。

ドツクゾーンの他の幹部面々の間では、ピーサード亡き後の後任の選定が始まっていました。血も涙もねえ。もはや彼には誰も期待していないようです。

「彼って策を弄して術に溺れるタイプというか」

傍目に見てきた感じ、別に作戦自体は悪くないと思うんですよね。単にプリキュアの方が強いというだけで。

それを陰で聞いているピーサードは当然面白かろうはずもありません。

 

 

メップルはなぎさに頼んで、ミップルに会いに行くようです。雪城家に向かうなぎさとミップル。途中藤ピー先輩とすれちがってドギマギしながらも声を掛けるなぎさ。今まではまともに話しかけられていなかったので、1歩前進です。とはいえまだ先輩の名前すらまともに知らないんですよね。

 

ほのかの家に恐る恐る入るなぎさ。メップルとミップルはラブラブでも、自分と雪城さんはそうじゃないと言うなぎさ。ぎこちない距離感が端的に出ているセリフでとても好きです。

一方、ほのかもなぎさに会いたかったようです。一瞬困惑するなぎさですが、単にほのかのほうでもミップルがメップルに会わせろと言っていたようで。

メップルミップルのデートの同伴で一緒に行動する流れになったなぎさとほのか。

ラブラブなふたりに呆れるなぎさ。

「美墨さんは? ボーイフレンドとかいないの?」

いきなりストレートな質問を投げるほのか。気になった人には割とぐいぐい質問をしていくタイプなんですね。

と、そこへナンパ男たちが絡んできます。プリキュアでストレートにナンパが出てくるとは思わなかった。

「離れなさい! 何の権利があって人を連れて行こうとするんですか!?」

怒りをあらわにするほのか。かなり熱くなっています。間違っている人に対しては厳しいんですね。思ったことがすぐに言葉や態度にあらわれる性格のようです。

なぎさは困惑しながら、まともに関わりあうことはないとほのかを連れてその場を立ち去ります。

1話からそうなんですが、常識人なのは勉強の苦手ななぎさの方なんですよね。

 

さてお昼頃。軽く何か食べようかと言う流れになりますが、パスタ・ピザなどを提案するほのかに対し、たい焼き・焼きそば・お好み焼き・鍋焼きうどんとまるで意見の合わないなぎさ。

最終的にたこ焼きになりました。たこ焼きの移動販売をしている藤田アカネさんの元を訪ねます。ラクロス部のOGで元キャプテンらしいです。

「なんかなぎさにしちゃ珍しいタイプの友達じゃん」

そういうアカネさんの言葉に少し恥ずかしがるなぎさ。これは、あれですか。なぎさからすると、ほのかは友達というには少し自分より格式が高いように感じているところがあるんでしょうか。自分には不釣り合いだと思っていたり? 一方のほのかは涼しい顔をしています。ほのかからすると、もうすでに友達という認識だったのかもしれません。

たこ焼きはほのかにも好評でした。アカネさんもいい人そうだとほのか。アカネさん、なんでもやりたいことをやるために大企業をやめてたこ焼き屋で修行をはじめたのだとか。すごい人ですね。

なぎさは、口の周りをソースと青のりだらけにしながらたこ焼きを完食します。それを見て思わず笑い、ハンカチを差し出すほのか。

 

ほのかの提案で、なぎさの行きたい場所にいくことに。

「美墨さんておもしろいわね。一緒にいるとすごく楽しい」

と、ほのか。本心なんでしょうね。ほのかはお世辞を言うタイプではないので。

「ほんとに? だってなんか無理してない?」

なぎさはほのかの言葉を信じきれません。まだ彼女のことをよく知らないし、知っている部分に対しても引け目を感じてしまっているのでしょうね。

 

ミップルメップルも満足したので、解散することになった二人。別れ際、少しだけ寂しそうにするほのか。多分、休日をこんな風に友達を遊んで過ごした経験がなかったのかもしれません。

二人が別行動を始めたことを確認し、ほのかの尾行をはじめるピーサード

 

 

「なんだかな。アカネさんにも言われちゃったけど、住む世界が違うって言うか、趣味が合わないんじゃないかなって」

このセリフが今回、もっといえば5話までのなぎさからほのかに対する感覚の全てなのでしょう。友達になれる、という可能性を最初から諦めてしまっています。

ハンカチを返し忘れていたことに気がつき、なぎさは雪城家に向かいます。洗ってから返した方がいいんじゃないのそれ

 

「楽しかったね」

とミップルにこぼすほのか。

めちゃくちゃ感情がすれ違ってる! 

そういうの!! 好き!!!

……失礼、取り乱しました。そこへ現れるピーサード

「そんなに楽しかったか。もっと楽しもうか……」

いけないピーサード! セリフがめちゃくちゃ不審者!

 

一方のなぎさは、雪城家にまだほのかが帰っていないことを知りますが、そのままハンカチを返してしまいます。なぎさからほのかに会うための口実がなくなってしまいました。

嫌な予感がするというメップルの言葉を一応は聞き、ほのかが行きたがっていた図書館も見てみたなぎさ。ですが会えず。

メップルはミップルが心配メポ! なぎさはほのかが心配じゃないメポ!?」

「そうは言ったって。きっと他に用事があったのよ」

 

工事の資材置き場に追い詰められてしまったほのか。変身もできない絶体絶命の状況にも関わらず、ほのかの闘志は消えていません。

プリズムストーンは渡さない! この世界をあなたたちの自由にさせてたまるもんですか!」

啖呵を切るほのか。ほのかが立ち向かうのは、プリキュアに変身できるからではなく、ピーサードが明確に間違ったことを言っていると思っているからなのですね。誰かが大切にしているものを、力づくで奪っていい権利などあるわけがない。そう信じているからこそ、毅然と立ち向かう。

「お前が正しいと思うならそれを証明してみろ。力のないお前に何ができる!」

力を持っている側の言葉だけが正しい、それがピーサードの住む世界です。ピーサードジャアクキングを恐れながらも従わざるを得ないのも同じです。

ほのかは違います。たとえ力で及ばないのだとしても、正しいことを貫き続ける。それが雪城ほのかであり、もっと言えばプリキュアの基本的なあり方でしょう。

しかし力の差は歴然で、ほのかはミップルをピーサードに奪われてしまいました。

絶体絶命の危機に、なぎさが助けに現れました。ほのかを心配して探していたーーというわけではなく、心配して探し回っていたのはメップルの方だったようです。

「しかし変身できない今、お前たちにこの俺が倒せるか?」

といいながら、ピーサードはせっかく奪ったミップルをほのかに返却します。そして不敵に笑うピーサード

「全力で来い。プリズムストーンは絶対に奪ってみせる」

ピーサード、お前っ! やめろ、無茶だ!! 5話まで何を見てきたんだ!?

まあちゃんと考えるとすると、ピーサードは力の行使そのものを楽しむタイプなのですかね。自分が存分に力を振るうことが好きで、だからこそいろいろな特殊能力を身につけ、それを万全に生かす策をうってきた。ですがピーサードには他人が見えていません。それで傷つく街や人のことも、プリキュアの力量も。

「偽善者ぶって他人をいたわってどうなる! 命乞いをしろ! 自分だけ助かりたいと言え! 先にそう言った方だけ助けてやろう!」

自分のことだけしか考えていないピーサードにとって、他人のために戦おうとするプリキュアほど目障りなものはないのです。しかしそんな脅しに、プリキュアが耳を傾けるわけもなく。

「そんなの絶対間違ってる!」

「だったらどうする!」

「こうするに」「決まってんでしょ!」

手を繋ぎマーブルスクリューの準備態勢に入るプリキュアピーサードの顔がこわ張ります。そりゃそうだ。過去4回ともこの技でいいようにやられてきたわけですからね。

放たれた必殺の一撃。しかし今度ばかりは、ピーサードもエネルギー波を放って応戦します。ぶつかりあう二つの光線。ぶつかり合う二つの主張。勝つか負けるか、力だけが全ての世界に生きるピーサード。力で人を思い通りにしようとすることを認めないプリキュア

「バカにしないで! みんな一生懸命に生きてるのよ! 理解しあって、尊敬しあって生きているんじゃない!」

ほのかの想いの力でマーブルスクリューの出力が上がり、ピーサードを圧倒しました。

なぜ自分が敗北したのか最後まで理解できないまま、ピーサードは闇になって消え去って行きました。

 

「まさか……まさか私たちあの人のことを……!」

後悔し泣き出すほのか。今までは怪物然としたザケンナーしか倒してきませんでしたし、しかもザケンナーは倒されてもゴメンナーになって退散していくのみでした。今度という今度は違います。自分たちと幾度となく戦った、間違っていたとしてもひとつの人格を持っていた敵を完膚なきまでに消滅させてしまったわけです。

メップルミップルは、ほのかたちを「ピーサードは元の闇に戻っただけ」となぐさめます。……これは、なんというか、なぎさとほのかに対するフォローでもあり、小さい子に対する説明でもあるのでしょう。

ですが、今回の話の描写からして実際にこの5話が伝えたいメッセージは真逆だとしか思えません。これについては後ほど。

 

倒されたピーサードの首飾りが、緑色のハートの形をした宝石に変化しました。それはなんとプリズムストーンピーサードは、おそらくプリズムストーンの『全てを生み出す力』を核にジャアクキングが作った存在だったのでしょう。

今後も幹部たちを倒しつつプリズムストーンを集めていくのですね。というところで次回です。

 

 

 

すれ違いと、戦いと、ピーサード

 

非常に悲しい話です。個人的に愛着のあった幹部が退場してしまったこともそうですが、他の面でも。

 

なぎさとほのかは、5話の段階では終始分かり合えていませんでした。なぎさを友達だとすでに認識しているほのかと、未だ関係にぎくしゃくを感じているなぎさ。ほのかとミップルのピンチにかけつけようとしたのは実際にはなぎさではなくメップルでした。それを頭に入れた上でほのかの主張を思い返してみます。

「みんな一生懸命に生きてるのよ! 理解しあって、尊敬しあって生きているんじゃない!」

理解し合えてないんですよ、実はまだ。そのことにほのかはまだ気がついていないわけです。このセリフの直後にわざわざほのかからなぎさの手を強く握らせる描写をしていることからして、おそらく意図的に書かれたセリフなんだと思います。

 

そして何より、「力で主張を通すのは間違っている」と啖呵を切りながら、結果的に力でピーサードを押し切り命を奪ってしまったほのか。皮肉にも、勝者と敗者しかいないというピーサードの主張を体現する形となってしまいました。戦いとはあくまでもこういう悲しいものなのだ、という強いメッセージを感じざるを得ません。

子供向け番組の中で戦いというものを題材にすること、その根底から問い直そうとしてるのでしょうか。

 

それにしてもピーサード。まさかたった5話しか登場しないとは。高橋広樹氏の熱演も相まって、非常に魅力的なキャラでした。敵としての容赦のなさを持ち、合理的な作戦と本人の技量でプリキュアを追い詰める。そして最後までプリキュア側の価値観を理解できることなく散っていく。

さらば、そしてありがとうピーサード