神原のブログ

同人小説などを書いています。

【ふたりは28話感想】本放送は8月15日でした

ふたりはプリキュア 28話『レギーネ登場!ってもう来ないで!』

 

いきなりさなえお婆ちゃまの過去回想。さなえおばあちゃまがまだ今のほのかより幼く、父親が軍服なのを見ると戦中なのかあるいは戦後すぐのことなのか……

さなえと一緒に、長い坂道を登る父。坂の上のケヤキの木の隣に立つと、夜空の星と街の灯が一体になった美しい景色が広がっていました。

「どんなに苦しい坂道でも、その向こうには綺麗な景色がひらけてるもんだ。くよくよするな。どんな時でも希望を持って、な」

そうさなえを励ます父。さなえの手元にはミップルが。

蝉の声。ほのかの家で共に宿題をしているなぎさとほのか。夏休みか。

暑さに完全にバテてるなぎさ(タンクトップかわいいな)。妖精達は元気です。夏のアンニュイな感じというか、倦怠感が画面に出ているのがエモい。今日の演出はどこか一味違います。

そんなくだらない遊びの中、突然予言をするポルン。

「目覚めるポポ……赤い柱危ないポポ……」

 

街をあてもなく彷徨う、辛気臭い顔の女性。赤い靴、赤い髪。不思議な力で車を止めてしまいます。新幹部のようですが、前回の角澤同様何を考えているのかがさっぱりわかりません

 

 

いつになったら戦いは終わるのか、本当に自分たちは勝ち続けられるのか、もし負けたら? いずれこの世界もドツクゾーンに食い尽くされてしまうんじゃないか? 珍しく不安をあらわにするなぎさ。

今まで口に出してこなかっただけで、いつ戦いが終わるのかという思いはずっと抱えてきたのでしょう。それを言わずにやってこれたのは、プリキュアに7つの石を揃えるという目標があり、かつ一度はジャアクキングを倒すところまでいけたから。

一度倒しても戦いが終わらなかったという事実は、想像以上に彼女を追い込んだのです。もちろんミップルメップルとの再会はうれしかったのでしょうが、それと戦うことは別。

同じような辛さを抱えていたのはほのかも同じ。悩んだところで答えの無い問い。

 

そんな二人の悩みに、さなえは気がつきました。

「それは、『どうしようもない』と思うから、どうすることもできなくなるときだってあるんじゃないかしらね。そしてますます不安だけが膨らんでいくの」

助言するさなえ。ほのかは、そういうおばあちゃまは「どうしようもない」と思った時はないのとたずねます。

それに対するおばあちゃまの回答は、

「この街がなくなったとき」

でした。

 

 

戦う、ということの意味

この28話が放送されたのは2004年8月15日。言うまでもなく、終戦記念日です。ですがまさかプリキュアで戦争体験を取り上げる回があろうとは……。

今回が演出に力を入れていたのも納得です。

 

戦後。焼け野原になったさなえの(今のなぎさたちの)住む街。雪城家もその半分が焼失し、冒頭の回想にいたさなえ父の姿もありません(つまり……)。

さなえは無意識のうちに、昔父と登った坂道を登りました。ケヤキこそ残っていたものの、眼下には焼け野原が広がるだけ。街、と呼べるものは残っていませんでした。

希望を失いかけるさなえに、ミップルの声が響きます。

「希望を忘れてはダメ」と。

その言葉で、さなえは明日への希望を取り戻したのです。今日がどんなに辛くても、明日はきっといい日になると。

 

思えばミップルもまた、戦により美しかった故郷を奪われた女の子です。しかし『希望の姫君』として、いつか光の園を元に戻すことを願いながら100年という時間を人間界で過ごしてきた。

子供向け番組としてぼかされ続けてきましたが、なぎさやミップルメップルたちはドツクゾーン侵略戦争に巻き込まれたと言っていい。そういう核心の部分を描くことに、初代スタッフの戦いに対する一貫したスタンスを感じますね……。

 

 

 

アカネさんの屋台がかき氷屋になってる! という小ネタをはさみつつ、さなえの言葉に感化されたらしいなぎさ。話に出てきた『ケヤキの木』を目指して歩いていきます。

その道の途中、例の辛気臭い女性に出くわします。

ポルンがただならぬ気配を感じて騒ぎ出し、なぎさたちは女性がドツクゾーン関係者だと感づきました。

 

女性は無意識のうちに5体のザケンナーを呼び出し、どこかへと去っていきます。

ふたりはプリキュアに変身。

ザケンナーと戦いますが、女性を守ろうとするザケンナーの気迫に苦戦します。

 

女性はプリキュアの姿を見つけると、その姿を見てジャアクキングのときの記憶を思い出し、怪人形態に変身。ですが変身してすぐに、角澤によってどこかへと連れ去られます。

「お前には先にやることがあるはずだ」

後を追いかけようとするプリキュアですが、ケヤキの木の横にたどりついたプリキュアに見えてきたのは、眼下にいた100体近いザケンナーの大群でした。

絶望しかけるなぎさ……と思いきや、とっとと日常生活に戻りたいなぎさは、それを邪魔するザケンナーに怒り心頭。

力強くザケンナーの大群に突撃していきます。ここの戦闘シーン、なぎさ達の気迫もあって見事というしかない。高速で動かすカットと、スローで魅せるハッタリの塩梅が完璧すぎる。

 

一方なぎさ達の戦闘中、謎の女性もまた火山のエネルギーを吸収。空に赤い柱を立てます。

ザケンナーこそ倒せたものの、敵側もまた目的を達成。闇の戦士・レギーネが覚醒しました。それはそれとして角澤の正式名称はいつ出るのか

 

 

力を増していく不気味な闇の勢力。不安がるメップルたちに、なぎさ・ほのかは希望を失わなければ、きっと大丈夫だと答えます。

ケヤキの木から見下ろした、今の活気あふれる街を見ながら二人はそう確信するのでした。というところで次回。

 

 

 

すごい(語彙力)

 

プリキュアを見ていると、演出シナリオ戦闘の高レベルさに『神回だ……』としか言えなくなる時があります。これがそういう回です。

 

プリキュアシリーズで、戦争について正面から取り上げるとは思いもよりませんでした。

今回の語り手はさなえ。戦争に巻き込まれた幼少期のさなえが今回の主役だったと言ってもいいです。

また戦火で街を失ったさなえと、ドツクゾーン侵攻で故郷を奪われたミップルを綺麗にリンクさせるという設定の活かし方もただただすごい……。

 

まだ初代未見の人にはこの回だけでも見て欲しい、というのは大げさかもしれませんが、そう言ってもいい。プリキュアが戦隊モノを女の子バージョンにしただけのアニメじゃなくて、戦うということがどういうことなのか根本の部分から考えられた作品なのだとよくわかると思います。

でも27話までの丁寧な積み重ねを経た上でのなぎさのセリフなので、やっぱりこの回までの27話も見て欲しい!