さらばメカゴジラ -GODZILLA 決戦機動増殖都市の感想-
ハル……オイ(挨拶)
どうも神原です。
今回は『GODZILLA 決戦機動増殖都市』を観てブログ熱が高まったのでブログを開設しました。
『GODZILLA 決戦機動増殖都市』とは何か
静野孔文・瀬下寛之監督、虚淵玄脚本による3部作のアニメ映画『GODZILLA』シリーズの2作目です。1作目の『怪獣惑星』についてもそのうち語りたいですが、今日はざっくりと前作からの流れを振り返っておきます。
20世紀末、世界各地に同時多発的に現れた巨大生物『怪獣』が現れるようになった。そして現れた規格外の怪獣『ゴジラ』により、人類は半世紀に渡り敗北を重ね、ついには地球放棄を決意。同盟を組んでいた2つの異性人種族『エクシフ』『ビルサルド』とともに宇宙船オラティオ号とアトラム号にて新天地を求める旅に出た。
出発から22年。アトラム号はついに新天地を見つけることは出来ず、主人公・ハルオの立案によりゴジラを殲滅し地球へ帰還する作戦に望みをかけることとなる。しかし想定外の長距離亜空間航行の影響で、地球は2万年の歳月が経過していた。そこは金属植物とゴジラ属怪獣の跋扈する怪獣惑星となっていた……!
……長くね?
これでまだ導入部なんだからびっくりです。前作『怪獣惑星』では、以上の説明をした後に宿敵ゴジラと再戦。ハルオ立案の作戦は有効で死傷者は出しつつもゴジラを殲滅することに成功。ところが、倒したゴジラをはるかに超える体長300メートルのゴジラが出現し、部隊は壊滅してしまった! というところまでです。
1作目の印象は正直、SF映画としてはSF要素多めで満腹、物語は薄味という感じでした。
(好きではあったんですよ)
1作目での膨大な設定説明が終わり、ついに本格始動する2作目。あの人気怪獣『メカゴジラ』や『モスラ』の出演も噂されていました。果たしてーー!!
メカゴジラシティが突きつける『怪獣の定義』
メカゴジラ……終始出てたし大活躍!(白目)
モスラ……卵だけ残ってた
見た方ならお分かりでしょうが、メカゴジラは序盤からずっと出ていました。しかし最後まで、私たちが想像する形では出てこなかった。
今作のメカゴジラの見た目に一番近い画像がこれです。
丸っこくてかわいいね!
今作のメカゴジラ……それは自己修復し自己進化するナノマシン『ナノメタル』の群体そのもの。地球放棄前に開発されていたゴジラ型メカゴジラはすでに頭を残して崩壊していましたが、その残骸は2万年の間自己修復と自己進化を繰り返し、巨大な自己製造プラントを建築するまでに至っていました。
さしずめ『メカゴジラシティ』といったところか……
怪獣としてのメカゴジラを期待して観に行った方が落胆するのも当然といえば当然ですし、僕とて肩透かし感がなかったかと言われると否定できません。
が、これこそが本作における『怪獣』なのだ、ということはかえって強く伝わってきました。
『怪獣』、それは人智を越えて星すら支配してしまう人の文明の『到達点』。
メカゴジラはビルサルドの生み出した科学の結晶です。その証拠にメカゴジラを見つけたビルサルド人たちの浮かれっぷりたるや……*1。
その姿を観て確信しました。感情や信仰を嫌うビルサルド人にも、崇拝の感情は色濃くあると。彼らにとっては科学技術こそが信仰の全て。ビルサルドの科学の到達点であるメカゴジラは、彼らの精神そのものなのだと。
ビルサルド人はメカゴジラに尽くし、ナノメタルに自らを喜んで差し出しました。その異様な光景は地球人やエクシフには理解のし難いものでしたが、ビルサルドにとっては自らをより高位のもの一体化させることに他なりませんでした。
ビルサルドは、ゴジラを殲滅し越えるために『メカゴジラ』という怪獣となる道を選んだのです。彼らの信じる科学と合理化の名の下に。
最終的に、あと一手でゴジラを倒せるかもしれないところまで追い込みながら、怪獣と一体化することをハルオの大切な人間にまで迫ってしまったため、メカゴジラはコントロールルームのビルサルド人ごとハルオによって倒される結果になりました。
私はその判断が地球人にとっては正しいものであったと思います。怪獣『メカゴジラ』となったビルサルド人たちが、科学と合理化のもと地球全てをナノメタルに融合させたであろうことは想像に難くありません。メトフィリスの言うように、メカゴジラの勝利はビルサルドの勝利であって、ハルオたち地球人の勝利ではないのです*2。
4大怪獣と4つの種族
今作で明らかになった怪獣の役割が、もう一つあります。それは全ての人型種族がそれに対応した怪獣を持っていたということです。
ハルオたち地球人にとっては『ゴジラ』。破壊の王にして、地球環境そのものを自分だけのために隷属させた万物の霊長。
ビルサルドの『メカゴジラ』。科学と合理化の化身にしてビルサルドの誇りそのもの。
そしてフツア(地球に残った人類の子孫と思われる種族)の『神』。名前こそ伏せられたままですが、蛾の特徴を持つこと、小美人のような双子の巫女がいることからまず間違いなく『モスラ』でしょう。現在の描写から『モスラ』は自然と共生しようとするフツアの精神性を象徴した存在だと思われます。
エクシフは『ギドラ』。メトフィリスによればゴジラを上回る破壊の神であり、エクシフが母星を捨てるに至った原因そのものだと言うことです。ギドラについては、現段階では名前以上の情報がありません。メカゴジラシティのように、必ずしも既存の怪獣の姿ではないかもしれません。*3
さて、2作目が終了して、ようやっとアニメ版ゴジラについて見えてきたような気がします。
アニゴジとは、つまりは人型4種族とそれを象徴する4大怪獣の物語ではないでしょうか。それぞれの種族の精神を象徴し、それを体現する巨大で超越的存在こそが『怪獣』なのではないでしょうか。
メカゴジラが私たちのよく知る形で出てこなかったのは*4、私たちに今作の怪獣が象徴するものを見せつけるためだったのでしょう。
さらば、メカゴジラ
ああメカゴジラ。
2万年もの間主人たるビルサルドを待ち続け、密かにゴジラ関連怪獣を殺し続けたメカゴジラ。
2万年もビルサルドのコントロール用信号を記憶し続けていたメカゴジラ。
ビルサルドと共に不眠不休で要塞化を進めたメカゴジラ。
ビルサルドとメカゴジラの信頼関係は本物だった。
メカゴジラが勝手に生きた人間を取り込んだことはなかった。
メカゴジラが真の意味で怪獣となってしまったのは、ビルサルド人が自ら怪獣となることを願ってしまったためなのです。
メカゴジラはビルサルドの理念と共に散りました。ビルサルド人はまだアトラム号に残っていますが、3作目でここまでの存在感を示すことはもうないでしょう。
さらばメカゴジラ。
さらばビルサルド。
科学と合理化。
人類の進歩と調和。
メカゴジラ、私は君の勇姿を生涯忘れることはないでしょう……多分……